アンカリングは悪用禁止と言えるぐらい、強力で影響のある手法ですが、その割には巷の至る所でカジュアルに使われている手法です。そして、ほとんどの人がこの悪魔の手法にダマされています。アンカリングされると本当に妥当な金額なのか判断できなくなるので、高額商品・サービスを売る際に使えますが使い方には節度が必要です。

セットメニューは最善な選択ではない

ほとんどの人は、大抵のケースで最善の答えを求めずに、安易に直感的に判断をする傾向があります。

例えば、ファストフード店のレジで注文をする際に、パッと目に入ったセットメニューを選んでしまうなどです。

では、セットメニューの注文は最善の選択と言えるでしょうか?

恐らく、ほとんどの人にとって最善ではないはずです。

例えば、セットに含まれるポテトが必要ない場合もあるでしょう。

また、セットのドリンクのサイズがコスパがよいサイズでない場合もあります。

それでも、大半の人は、セットメニューを注文します。

そこそこの結果は成功体験になる

特に、レジ待ちで後ろにたくさん人が並んでいる場合などはプレッシャーを感じてじっくり選ぶことなく、このような安直に行動をする傾向があります。

こういった行動をする理由の1つは、これまでの経験上、こういった選択の仕方が最善ではなくても、それほど悪い選択ではなかったという経験があるためです。

平たく言えば、そこそこ満足できる選択だったという成功体験があるのです。

つまり、セットメニューを注文したからといって、ほとんどの人は後から後悔しないということです。

事実、価格もそれほど大きな金額ではありませんし、内容もそれほど悪くないでしょうからその後も同じようにセットメニューを注文しても問題ないと感じているはずです。

ヒューリスティックという安直な行動

ところで、こういった行動のことを”ヒューリスティック”と呼びます。

聞いたことのない小難しい用語を出してしまって申し訳ありません。

話を続けますが、では、なぜこういった安直な行動を人はとる傾向があるのでしょか?

実は、それは人間の脳というのはそのキャパが限られているからなのです。

そのため、なるべく効率よく情報処理をしようという本能があります。

平たく言えば、楽をすることで余裕を持たせるようにしている訳です。

基本的に、人というのは怠ける生き物だと言われますがその通りなのです。

あなたはこうして損をする

ただ、こういった行動パターンが災いして、重要な場面で大きな損をすることがあります。

事実、悪徳マーケッターは、この行動パターンを周到に利用して、あなたに価値が低いのに高額な商品・サービスを買わせる手法を繰り出します。

あなたも気を付けてください。

では、具体的にどういった手法で高額なものを売りつけられるのか?

手法としてはこうです。

売り手は、あなたが興味を持った商品・サービスの金額を最初は”ぶりぶりの高め”で提示してきます。

その数字を提示されると、された側はなぜかそれが基準点になってしまいます。

そして、その数字の合理性の判断が難しくなります

つまり、その数字が価格であった場合に、妥当な金額なのか判断できなくなるのです。

これが、先ほどの”人が楽をしたがる”ヒューリスティックの一種なのです。

なぜなら、基準点があった方が、その後の判断が楽になるからです。

最初に提示された高めの数字は、錨(いかり)のように心に留まります。

そのため、アンカリング効果とも呼ばれ、その後に入ってくる新たな情報ではほとんど動かずに心に食い込んでいると言われます。

ですから、あなたが買い手の場合はこのことに気を付けてください。

あまりにもカジュアルに使われているアンカリング

ちなみに、悪徳な売り手ではなくても、通常の販売でも”定価が表示されていたり、値引き前の価格が表示される”ことがあると思います。

これも最初に提示された数字として同じ効果があります。

定価や値引き前の金額が基準になるので、それと比較して表示されている金額を安く感じる訳です。

では、売り手としての私たちはどうすればいいのでしょうか?

このような人を惑わす方法は使うべきではないでしょうか?

使い方を間違えなければ私たちは使ってもいい

いいえ、積極的に使いましょう。

なぜなら、私たちは本当に価値のあるものを売っている訳ですから、この手法をまっとうに使う訳です。

特に、高額の商品・サービスを売る場合はこの方法を使わないと難しいです。

ただし、アンカリングに使う数字としての金額はウソを使ってはいけません。(悪徳ではないですから)

オススメの方法は、同業者ではなく類似業者の商品・サービスの料金と比較することです。

例えば、動画などのレッスンコンテンツを売る場合に、リアルなレッスン教室の会費と比較するなどです。

もちろん、正確な数字で、実際に公開されている金額を使ってください。

同じ内容を提供していることが前提ですが、リアルな教室の方が圧倒的に高額ですから、動画の金額はかなり安く感じるはずです。

悪徳業者はウソをつきます。

しかし、あなたのそれはウソではありませんから堂々とやってください。

あくまでも、あなたが自信をお持ちで世の中のためになる商品・サービスをまっとうな金額で売るための手段として使うわけです。