幼稚なマーケティング・セールスのノウハウが流布したのが原因だと思います。いわゆる、お店、店舗に一度足を踏み入れると面倒臭いことになる、ということをほとんどすべての消費者が認識してしまっています。日本人は、きっぱりと断るのが苦手なんです。だから、どんどんお店に近づかなくなる。

✓もうプレゼントは効かない

まず、1つ例を出します。

何度かご紹介している本「シュガーマンのマーケティング30の法則」ですが、監訳されているのが佐藤昌弘さんという経営コンサルタントです。

本の最後に、監訳者の佐藤さんの解説があるのですが、その中からのご紹介です。

車も売れにくくなっているため、自動車ディーラーもあの手この手の工夫をしています。

例えば、ディーラーからあなたにプレゼント付きのキャンペーンDMが届いたとします。

そして、そのプレゼントがなかなか魅力的でした。

ただ、あなたは今は車を買おうとは思っていません。

さて、あなたは、プレゼントをもらうために店舗に行きますか?

欲しい車が決まっていないので、ほとんどの日本人は多分行かないと思います。

「でも、プレゼントは多分もらえるだろうし、見るだけなら行ってみるのもいいのでは?」と家族や友人に促されたらどうしますか?

でも,行かないでしょうね。

理由は、見に行ってしまうと営業マンに言いくるめられそうな予感がするからですよね。

近い将来に他に欲しい車が出てきそうだから、そういった状況になるのは避けたい。

それに、その場で買わないと言っても、その後も営業は続くだろうからそれも嫌です。

それに何より、全く買う気がないので手を煩わせるのが悪い気がします。

以上、こんな感じが、日本人の顧客の典型的な心理だそうです。

✓紳士服店の3000円クーポン

もう1つ例として、今度は私の体験したことをご紹介します。

私がまだサラリーマンだった頃の話ですから、今から15年以上前でちょっと古いです。

当時はまだ通勤はスーツが当たり前の時代で、私もたまに紳士服店に足を運んでいました。

今となっては瀕死の紳士服業界ですが、当時からすでに厳しかったようで店舗でのセールスはエグかったです。

その紳士服店は、会員向けだか、専用のクレジットカード所有者向けだったか忘れましたが、1年に1回3000円のクーポン券を送ってくれます。

私は、これを使えば5000円ぐらいのジャケットが2000円で買えると思ってお店に出向きました。

あろうことか、私は、お店に入って店員さんに3000円クーポンを見せながら5000円ぐらいのジャケット探してますと伝えてしまいました(笑)

その後に店員の取った行動が予想できるでしょうか?

8000円のジャケットを勧めてきたのです。

「いや予算5000円ですから」と私が言うと、当然のように「3000円クーポンあるから8000円の買えますよ」と店員は返すという感じでした。

今の私は違いますが、当時の私は今よりも日本人ぽかったのでこのオファーは断れませんでした。

まんまと5000円を使わされた訳です。

ただ、こんなことやられたら、少なくとも私は、二度と来年以降にクーポン使って買い物しようと思いません。

もちろん、その際に私がやられたセールスは、その店員が考えた行動ではなくて、企業全体でやっていたマーケティング・セールスの方針だったのだと思います。

今は分かりませんが、当時は私と同じように、クーポン持ってふらふらお店に行ったら最後という人がたくさんいたんだと思います。

確実に顧客を遠ざけるマーケティングだと思います。

✓断れない日本人の不安を取り除く

では、こういった心理の日本人に来てもらうにはどうすればいいか?

それは、売り込まれる心配をなくしてあげること、そして、オファーに対しても気兼ねなく断れる保証をしてあげることです。

日本人の多くは白黒はっきりさせたくない人が多いのです。

これは、日本人の特性でよい面でもある”思いやり”という心遣い、配慮というやつだそうです。

海外由来のマーケティングは、この日本人の良さを逆手に取って悪用しているケースが多いのです。

具体的には、リアル販売でも、オンライン販売でもやることは同じです。

2つのことをしっかり謳ってお客様の不安を取り除きます。

1つ目、「売り込みしません」を明確に謳いましょう。

できれば、その証拠をお客様の声などを使って示せると完璧です。

2つ目、オファーに対しても、容易に気兼ねなく断れること、を謳いましょう。

もちろん、その理由も証拠付きで示したいです。

文章としては「こうこう、こういった理由で、オファーに対しても気兼ねなくお断りいただけるように配慮しています。」のような感じで説明をしておくのがいいと思います。

具体的に私のビジネスの場合を例にしてご紹介します。

コンサルティング内容のご説明をご希望される方には、お客様のビジネスの内容を伺った上で、どういったお手伝いができるかを具体的にご提案させていただきます。

そのために、事前に初回無料のコンサルティングという形態で説明セッションを行います。

ただ、その際に、具体的なご提案をさせていただいたからと言って、その場でコンサルティングの継続のご決断をお客様に促すことはありません。

正式なコンサルティング開始については、そのセッションが終わってから、翌日以降にお客様の方からそのご意志をご連絡をいただくことにしております。

私の場合はこんな感じですが、参考にしてもらえると幸いです。