もし、「ヒアリング内容 → 整理 → 必要書類 → 申請理由書の下書き」が生成AIでできるようになったら素敵だと思いませんか?

今回は、行政書士さん向けの内容ですが、他の士業の方々にも刺さる内容だと思います。

複雑な顧客のバックグラウンドを整理し、必要な手続きを洗い出し、最も時間を要する「理由書」の初稿が数秒で出力される。

言うまでもなく、このプロセスが実現すれば、行政書士の実務におけるリードタイムは劇的に短縮されます。

しかし、多くの事務所で生成AIの導入が進まない、あるいは実務での利用を禁止せざるを得ないのが現状です。

本日は、それを突破する現実的な解決策についてお伝えします。

行政書士がクラウド型生成AIを使えない理由

ChatGPTやClaudeに代表されるクラウド型生成AIは極めて優秀ですが、行政書士の実務においては「ガバナンス(統治)の限界」という重大な障壁が存在します。

まず、行政書士法第12条(守秘義務)への抵触リスクです。

生成AIがクラウドサービスである以上、入力されたデータは外部サーバーへ送信されます。

法人プランを利用している場合ならデータ学習をオフにする設定(オプトアウト)があるので、この設定で使っている方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、利用に踏み切れない行政書士さんも多いのではないでしょうか?

厳密に言えば、インターネット通信経路上での傍受やベンダー側のデータ流出事故だってあり得ます。

その段になってクライアントに謝って済む話ではないはずですから、クラウド型の利用に二の足を踏む行政書士さんの方が多数派なのかもしれません。

次に、クラウド型サービスの規約変更に対する追従の困難さです。

海外ベンダーを中心とするAIサービスは、利用規約やプライバシーポリシーが頻繁に改定されます。

しかも、頻繁に変えられます。

規約改定により一時的にデータ利用の同意条項が変更された場合、それをリアルタイムで検知して利用を停止するような「検知プロセス」を個人事務所や小規模法人で維持するのは困難です。

要するに、当初の規約を確認して安心していられないということです。

そして、超面倒くさい機微情報のマスキングコストの問題です。

生成AIにプロンプトを入れる際に、安全性を担保するために顧客の氏名、住所、会社名、具体的な事業計画などの機密情報をすべてダミーデータに置き換える(マスキング)運用が考えられます。

ただ、文脈を維持したまま完全にマスキングを行う作業は、かえって実務の業務負荷を高める可能性すらあります。

これでは、本末転倒です。

行政書士が生成AIを使うと劇的に効率化する業務

ただ、行政書士さんの業務には、生成AIを使うと劇的に効率化する業務が山のようにあります。

そのため、これらのリスクをクリアできた場合、実務において圧倒的な恩恵をもたらします。

例えば、各種許認可における「理由書」の構成案作成です。

例えば、出入国管理(ビザ申請)の理由書や、特殊な許認可申請において、顧客の経歴や動機から申請の正当性をロジカルに説明するための文章構成の生成です。

生成AIがあれば、説得力のある表現の選択肢を複数パターン出力させることができます。

次に、定型・準定型契約書および協議書の初期ドラフト作成です。

遺産分割協議書、各種契約書、離婚協議書などの作成において、顧客からヒアリングした要件(メモや箇条書きデータ)を基に、標準的なリーガルチェックに耐えうる初稿を自動生成する業務です。

これは、生成AIがかなり得意としている生成業務だと思われます。

最後に、過去の申請事例や補正記録の横断検索です。

これは、RAG(Retrieval-Augmented Generation / 検索拡張生成)活用とも言われて、大規模言語モデル(LLM)に、外部のデータソースを組み合わせて回答させる技術のことです。

事務所内に蓄積された膨大な「過去の許可事例」や「役所からの補正指示(修正要求)」のPDF群から、類似案件の手続き手順や審査の傾向を瞬時に見つけ出すことができます。

これは、後述する”解答”であるローカルLLMであれば、いやローカルLLMだからこそ、事務所内に蓄積された膨大なローカルのファイルを直接組み込むことができるのです。

NotebookLMを使ったことがある方なら、この用途の威力をイメージできると思います。

ローカルLLMという超現実的な選択肢

クラウド型のリスクを排除しつつ、上記の業務効率化を安全に享受するための解答が「ローカルLLM」です。

これは、自事務所が管理する物理PCや完全に隔離されたローカルサーバー内でAIを動かす技術です。

すなわち、完全な閉域環境による「守秘義務」の担保が可能になります。

インターネットへのデータ送信が一切発生しないため、行政書士法第12条に違反するリスクを排除できます。

顧客の生の相談記録、決算書データ、戸籍情報などをそのまま入力して処理させることが可能です。

面倒なマスキングなど一切不要です。

次に、過去の申請ノウハウ(知財)の安全なRAG(検索拡張生成)化です。

RAGは先ほど述べた、外部のデータソースを組み合わせて回答させる技術のことです

事務所内に蓄積された過去の申請書類の控え、補正指示の記録、審査要領などのPDF群を、外部に漏洩させることなくローカル環境でAIに参照させることができます。

自事務所のノウハウに特化した「高精度な実務アシスタント」を安全に構築可能です。

もちろん、リスクもありますから導入前に理解しておく必要があります。

まず、生成AIと言えばハルシネーションです。

ハルシネーション(事実誤認)の出力検証をするために、過去に処理済みの確定した案件を数十件用意し、AIが出力した結果と実際の正解を突き合わせ、誤情報の発生割合を評価しておいた方がいいでしょう。

次に、最新のLLMモデルを使っていても、AIの出力した法的な記述は「常に古い可能性がある」という前提に立つということです。

最終的な根拠条文は、必ず最新の法令や通達と目視でクロスチェックする運用フローを作っておくべきです。

個人的には、すべての行政書士さん(いや、すべての士業の方々)が、ローカルLLMによる業務効率化の可能性を、少々投資してでも試してみるべきだと思っています。

必要なのはそこそこのスペックの高いPCだけです。

もし、M1チップ以降のMacbook Air をお持ちなら、そのままインストールすればすぐに使えます。

Macbook Air なら最新機種でも20万円程度で爆速のM5チップ内蔵が手に入ります。

M5チップなら、相当高性能なLLMモデルが使えます。

肝心のLLMのインストールは、それこそ生成AIに質問すれば丁寧に導入方法を教えてくれます。

是非、チャレンジしてみて下さい。